伝統と未来

着物離れとともに、
「五泉は白生地だから、どうする事もできない」
と言われてきました。

だからこそ、
素材だから何にでもなれる
白だから自由に描ける
と前向きに考え
次の100年に向けてスタートしました。


100年続く絹織物工場の新しい決意
 ”白生地に、みらいをのせて。”

横正機業場の伝統継承と未来への取り組みを
動画にまとめました。

どうぞご覧ください。

ナレーション:伊勢みずほ

五泉絹織物の盛衰

新潟県五泉市は絹織物に最高の環境といえる豊かな水資源と適度な湿気を利用し、日本三大白生地産地の一つとして京都の丹後、滋賀の長浜とともに名を馳せました。
五泉羽二重で知られた明治時代から、時代の要求とともに夏物の絽を織り、帯地の塩瀬を織り、次々に高級品を産み出してきました。

しかし、近代化とともに着物離れが進み、白生地のニーズも減少。今年こそが底と思っていても翌年は更に沈み、少しずつ同業者が減っていきます。そして職人も一つずつ年を重ね高齢になっていきました。
また白生地を作る上では絶対に切り離すことのできない精練加工場も最盛期の施設の維持に苦心しています。 当社だけでなく、五泉産地、和装業界で課題は山積みでした。
しないと決めたはずの
事業承継


このような状況化もあり、一度は事業承継をしないと決めた横正機業場でしたが、四代目が体調を崩したことをきっかけに、2005年に兄(現社長 五代目)がピンチヒッターで入ります。「先細る業界の中でも後世に伝統の技術を残していけるように」とベテランの職人から織物の技術を、父から経営を、学びました。

2013年もう一つ想定外のことが。システムエンジニアとして働いていた弟も「家族の時間を大切にしたい、でも働くなら愛着や情熱の持てるところがいい」と合流しました。

将来の廃業を心に決め未来を閉ざしていた横正機業場でしたが、未来に向かって歩むことに変わっていました。
白生地しかない
という事実


まず会社をより知ることから始めました。今あることを「伝統」という言葉で済ませてはいけなかったのです。言葉として存在していなかった経営理念、反物に押している「泉華」の捺印の歴史や意味、会社のロゴ。一つ一つ意味を考え、足りないものは作り、新しいスタートの準備をしていきました。

様々な思いを巡らせているなか、心の中に「なぜ五泉は白生地しかないのだろう?」という疑問が生まれます。
多くの繊維産地は、他の天然繊維や化学繊維を扱い、和装から洋装生地へとシフトし産地の様相を時代と共に変化させています。しかし、五泉は昔から何一つ変わらない「正絹(シルク100%)の白生地」だけです。この時代の変化に流されていない"客観的事実"にこそヒントがあるのではないかと思いました。
変化していないことに
可能性を見出す


そして世にある様々なシルク製品の生地を見て、他の産地から見た五泉の話を聞いて、確信します。

五泉の白生地は特別なのだと。

生地の表面にちりめんのような凹凸がなくごまかしのきかない美しさが要求される羽二重や塩瀬。これを日々織り続けることに他産地の職人は驚愕していました。整った絽の目は海外製とは違い丁寧できめ細やかな心配りが感じられます。透き通る紗は目ズレすることなく試行錯誤の上になりたった絶妙なバランスだと知ります。日々何気なく見ていたものが当たり前でなく特別なのだと実感しました。

真似できないものだからこそ、変わらずとも残り続けてこれた。五泉は白生地だから何も出来ないのではなく、変わる必要がないことにただ依りかかっていただけだと。見方を変えれば、大きな可能性に溢れていると思いを馳せました。
未来を照らす
私たちで決めた言葉


今までは注文を受けて織った白生地は和装業界という決められた範囲にしか流通していませんでした。
これだけ素晴らしい生地なのだから使いたい人がいるはず、白だからどんな色にも染まり様々な利用ができるはず。分からないながらも強く信じ一歩踏み出すことを優先しました。

そしてその道しるべとなる言葉を探します。
伝統を守りながらも、新しい価値を生み出し、白生地の未来を築いていきたい、という横正機業場の強い決意を秘めた言葉。

白生地に、みらいをのせて。

伝統と未来は
ともに歩んでいく


その後様々なことを進めていきます。洋装業界向けに生地を売り込んだり、クリエイターと連携したり。 うまくいかないことばかりでしたが、最後まで残ったのは、主体性と覚悟を持って取り組んだ「自社製品」だけでした。

今の私たちの強みは、兄である社長がベテラン・若手の職人と交り技術の継承をしながら白生地を支え、弟の専務が情報発信や自社製品を担い、新しい目標に皆で歩んでいくワンチームということです。

つまり、伝統の白生地を大切にしつつ、今必要とされるものを市場から探り、何のしがらみもなく理想の白生地に変化させていける。そして、生地から商品という目に見える大きな変化をおこし、お客様へ直接届け感動の華を咲かせる事もできる。私たちの生地への飽くなき情熱を注ぎ込む事ができるもの、それが自社製品だったのです。

白生地から生まれた
ファクトリーブランド


自分たちで製品を作るなら妥協のないものづくりをしたい。生地から開発するなら今までにない表現でお客様を感動させたい。着物の美しさや品格、文化、精神性までを気軽に日常生活に取り入れられるようにしたい。洋装生地のように幅が広くなくても創意工夫で無駄なく作りたい。

様々な思いを交錯させながら自社ブランドを立ち上げました。

ROSHA

夏の着物に使われる「絽(ろ)」「紗(しゃ)」に着目し、4年に及ぶ試行錯誤の末、着物の4分の1以下の軽量化を実現しました。独特の透過性を持つ新素材に、日本全国の様々な染職人が描いたシルクストールは風や光の具合で変幻自在な美しさを魅せます。肌にやさしいシルクマスク、毎日の生活を豊かにするビューティケア商品などラインナップは広がり、白生地の可能性を広げています。

>ROSHA オンラインショップ

しろずきんちゃん

白生地は結納の品など物事の始まりを表し気持ちを伝えるものとしても使われていました。新しい命の誕生に白いシルクを贈るみらいを作りたい。赤ちゃんのお肌にふれるものは安全で思いやりにあふれたものを選びたい。思いをこめたシルクのベビーアイテムです。

>Silozukinchan オンラインショップ

次の100年に向けての手ごたえ

今までは作った白生地を京都に出荷し、その後どのようになっていくか分かりませんでした。しかし、自分たちで商品にすることで、お客様の声を直接聞くことができるようになりました。 その声を現場の職人に届けることで喜びや反省、やりがいにつながります。

それこそ今まで味わう事のできなかった
「白生地が生きている」
という感動です。

スタートは思いと勢いでできましたが、継続することはお客様の信用や信頼を日々積み重ねていかなければなりませんので、容易なことではないと感じています。
ただ言えるのは「この新しい循環こそが次の100年につながっている」という気持ちです
愛する五泉のために
私たちの努め


五泉の白生地は輝かしい時代もありましたが着物の衰退とともに、決して多くの人が志すような仕事とは言えなくなりました。しかし、私たちは別の形で五泉に貢献していきたいと考えています。

世界へ

素晴らしい五泉シルクを日本だけでなく世界の人々に届け、五泉を知り来て頂くきっかけとなりたいと思います。



子どもたちへ

五泉の子供たちに白生地を伝え、大きくなった時に、誇ったり伝えたりしたくなる存在でいたいと思います。



五泉シルクを"子供たちに"伝える教育系エンターテイメント「五泉シルク未来学校」 / 企画 : 横正機業場
>五泉織物工業協同組合HP
さいごに

白生地はまだ何も染められていない真っ白なシルクの布。その無限の可能性に、私たちのアイデアや想いを自由に表現し、新たな価値を生み出していきたいと思います。次の100年を目指して一歩一歩着実に歩んで参ります。

一緒に白生地を育てていく仲間も募集しています。ご興味ある方お待ちしています。